2024.04.30

「好き」が多い子は幸せ力の高い子。「世界の優秀な教員10人」に選出された​​正頭英和先生に聞くプログラミングで身につく力とは?

教育界のノーベル賞といわれる「グローバルティーチャー賞」のトップ10に選出された正頭英和(しょうとうひでかず)先生。正頭先生には、2024年から『デジタネ』の公式アドバイザーにも就任いただいています。正頭先生流の子どものやる気の引き出し方、プログラミングという親の世代にはなかった習い事との関わり方、『デジタネ』を続けることでどのような力が身につくのか…などを伺ってみましたので、ぜひご一読ください!

〈正頭英和(しょうとうひでかず)〉

小学校 教諭 / 2019年に「教育界のノーベル賞」と呼ばれる「Global Teacher Prize(グローバル・ティーチャー賞)」トップ10に、世界約150ヵ国・約3万人の中から、日本人小学校教員初で選出される。AI時代・グローバル時代の教育をテーマにした講演も多数。桃鉄教育版のエデュテイメントプロデューサーもつとめる。

〈正頭英和先生〉

YouTubeやゲームばかり!やってみようのハードルが高い現代の子をやる気にさせるには

デジタネ:2023年の小学生白書によると、77.1%の小学生が何らかの習い事に励んでいて、プログラミング教育が必修化されたことで、プログラミングの習い事も関心が一層高まっています。習い事を始めるきっかけとして「子ども本人がやりたがったから」というものが多い一方で、子どもをやる気にさせることの難しさを嘆く保護者さまも多い印象です。

正頭英和先生(以下、正頭先生):現代の子どもたちはやってみようのハードルがとても高いと感じます。「やってみよう」というのは基本的に時間がある子の発想で、現代の子どもたちは昔に比べて暇つぶしの道具がありすぎるんですね。YouTubeもゲームもノーリスクで暇を潰せますから。

デジタネ:たしかに親世代が小さい頃より、子ども向けの娯楽が増えています。そうなると、子どものモチベーション維持にも苦労します。子どもたちのやる気を引き出し、自走してもらうために正頭先生が実施されている方法はありますか?

正頭先生:子どもたちを自走できるようにするには方程式があって、ゴールと現在地と走り方を示してあげると、やる気が出ます。僕が授業でやっていることは「ゴールはここ、君たちの現在地はここ、走り方はこうだよ、うまくいけば45分でできるかもしれないよ、ではスタート!」というものです。がんばればゴールに手が届きそうというのも大きなポイントですね。ただ、現在地を教えることはとても難しいので、あえて最初に失敗させることで、子ども自身に現在地を示してあげることが重要です。

『デジタネ』の構成もこれに近いですね。できるかできないかわからないけど多分できる、が子どものやる気を持続させるために重要ですが、『デジタネ』は頑張ればできる!がちょうどよく設計されています。

たくさん間違えるからこその学び。間違えることで得られるプログラミングの価値

デジタネ:保護者さまから聞かれる質問で多いのが、プログラミング教育でどのような力が身につくのでしょうか?というものです。正頭先生はどのようにお考えでしょうか?

正頭先生:一つ言えることは、プログラミング教育はプログラマーを育てる教科ではないということです。プログラミング教育で身に付くのは、試験などで発揮する能力だけでなく、生きる能力です。学びにおいて、失敗やミスから経験できることがとても大切ですが、様々な教科の中で「たくさん間違える教科」は間違いなくプログラミングです。プログラミングには「あ、間違えた!」 が無数にあります。

そして『デジタネ』はエンターテイメント性のある空間で学んでいくので、子どもは間違いをネガティブにとらえずに続けられ、それが圧倒的な学びになります。

〈『デジタネ』の画面。エンターテイメント性の高い空間で学んでいきます〉

ますます進化するテクノロジー。10年後20年後も幸せに生きる大人になるには?

正頭先生:Chat GPT以降、世の中が劇的に変わっていく中で、10年後20年後にどんな力が必要かというのは僕にはわかりません。ですが、10年後20年後に幸せに生きる子どもはどんな子かというと『好きが多い』子どもであることは間違いありません。

好きが多いとはどんなことかというと、どんなテクノロジーが現れても楽しめる、知的好奇心が高い子です。知的好奇心とは、やってみようのハードルが低いこと、「とりあえずやってみよう」ができることですね。やってみようのハードルが低ければ、色々なものを好きになる可能性が高まります。

デジタネ:『好きが多い子は幸せになれる子』というお言葉、とても納得しました。『デジタネ』を長期間続けている子どもの保護者さまからは、積極性が増した、時間管理や優先度付けができるようになった、数学・英語の成績が上がったという声は多く聞きます。先生は実際に『デジタネ』を続けていくと、どのような力が身につくとお考えでしょうか?

正頭先生:実際に『デジタネ』を試してみて感じたことは、横軸(楽しい/楽しくない) 縦軸(難しい/簡単)の4象限で考えた時に、一般的に勉強は楽しくなくて難しいもので、その対角線上にあり、簡単で楽しいのが遊びです。僕が理想とする『エデュテイメント』というものは、楽しいけど難しいもの。良い教材というのは「楽しいけど楽じゃない」のです。

『デジタネ』はこれにあたり、エンタメ性が高く、入り口のハードルは低いですが、いざ進めていくとだんだん難しくなってくる。中身は非常に骨太で理想の教材と言えるのではないかと思います。

〈学びの4象限〉

正頭先生:繰り返しになりますが、『デジタネ』を続けると「とりあえずやってみよう」のハードルが低くなると思います。このハードルが高い現代の子どもたちにとって、好きを増やすためには「とりあえずやってみる」ということが重要です。突出した力を発揮するのは「好き」から始まり、好きを見つけて伸ばすことは子どもにも社会にも良い結果をもたらします。

プログラミングが好きな子で、算数が苦手という子は僕は見たことがありません。

好きを伸ばすことで苦手が薄まっていき、プログラミングをすることで他の教科や積極性もつられてあがっていくと言えます。故に、幸せに生きる力を育てることができる習い事だと思いますね。

『デジタネ』はどんな子どもにお勧め?教室に通う価値は?

デジタネ:最後に、『デジタネ』はどんな子どもにお勧めでしょうか?

正頭先生:ゲームやYouTubeが好きな子はもちろんですが、いま僕が述べてきた子と真逆の、「やってみよう」のハードルが高い子にもおすすめしたいです。引っ込み思案だったり、あまりいろんなことに挑戦しようとしない子はプログラミングをやったらいいんじゃないかな、と思います。アバターが先生なのも子どもには親近感をもってもらえるポイントですね。

オンライン、対面の教室それぞれにメリットがありますが、対面教室はモチベーションの維持をしやすいことが良さです。オンライン教材は機械が色々やってくれて、応援してくれたり効果音を出したりしますが、そこで揺らぐほど子どものモチベーションはやわじゃない。そこを埋めてくれるのが対面の教室の良さなんです。良い先生や良い教室に出会えることは教室に通うことの大きな価値と言えます。いい先生を中心とした、子どもに「もうちょっとやってみたい」と思わせる環境や、同じ年頃の子どもたちと一緒に学ぶことでコミュニティへの帰属意識を形成でき、それが安心感につながります。その結果、継続率も教室の方が長い傾向にあるのではないでしょうか。

デジタネ:子どもの好きを見つけて伸ばしてあげるのは社会にとってもいいことで、そのために大人ができることは、たくさんの経験をさせてあげることという言葉が非常に心に刺さりました。本日はありがとうございました!